[0] 痕 Ver.2002-[Id of Radiance ver.5]





■ 痕 Ver.2002

 Leaf不朽の名作の一つ「痕」。その痕が突然リメイクされるのを知ったのはジツに発売数日前のコトだったりする(苦笑)。最近そのテの情報を積極的に収集するコトがないもので(苦笑)。
さて、僕的にもかなり記憶に残る名作ではあるが、流石にこれだけの年月経ちつつ突然リメイクされると言うとそこに一抹の不安がないわけではなかったので、「発売日即ゲット!」という気にはならなかった。
 それが先日ちょっとしたきっかけで入手することになったので、そのまま軽く試しプレイをしてみることにした。ただし、私は試しプレイが本格プレイに進展する確率が非常に高い(苦笑)。そして今回もその例に漏れず、結局そのまま全EDをクリアしてしまったのである(苦笑)。

 突然の父の訃報、従姉妹の4姉妹との再会、夜な夜な見る異様な夢と、体の変調。そして訪れる最初の惨劇・・・。なんか冒頭部分だけ表現すると如何にも猟奇的作品のようであり、確かに一部そーゆー部分もあるのだが (元々私はホラー嫌いなので、初代はそのイメージのせいでしばらく手を出す気になれなかった)、プレイしてみるとそれは話の一部分でしかなく、話の本筋は別のトコロにあるのが判る。
 さて、久しぶりにプレイして感じたのが、今なお色あせないシナリオの完成度だった。某エヴァ以降、ゲームの世界でもムダに痛いだけで現実感と説得力の無いシナリオが増えているが(冷)、一度ならずプレイしているにも関わらず、新鮮さを失わず、物語に没頭させるシナリオの力は驚異的である。「今」というタイミングでこの痕が発売されたのは謎だが、「ちょうどいいカンジに忘れていた」タイミングだったのもまた確かであろう(苦笑)。
 さて、新版と言っても、シナリオは大きな違いがあるわけではない。変わったのはキャラのグラフィックであろう。当然、旧版との比較だと好みの問題もあるだろうが、等身が上がり、色遣いがおとなしくなった絵柄はこの作風に合っているのではないかと思われる。特にイベントグラフィックはより人間っぽいというか、絵が柔らかいというか。なんとなくPS版とうはとの絵を思わせる。噂では水無月氏がLeafに戻ってきたらしいが、あの人の絵って結構独特で好きだったりする。ただし、各キャラの立ちグラフィックは全員肩が下がり気味?
 真偽のほどは不明だが、高橋、水無月両氏のLeaf復帰第1作とゆー話である。これが本当なら「痕弐」、あるいは「痕正伝」(笑)などの展開も期待できるところであろうか。

 さて、細かい話の筋は置いとくとして、いくつか旧版と異なるトコロがあったので挙げてみよう。なお、ここからは多少なりともネタばれが入るので気になる方はご覧にならない方がいいだろう。また、なにぶん私が旧版をクリアしたのはだいぶ前のコトなので、イマイチ自分の記憶の信憑性に自信が無いのだが、一応自らの記憶が正しいという前提の元、話を進めたい。間違いはご指摘いただければ幸いです(笑)。


その1.環境の変化
 とでも言うのか(苦笑)。いくつか現代に合わせて口調やら小道具やら変化したところがあった。携帯電話の普及やら微妙な台詞やら。ま、違和感無くて良かったです。

その2.細かいニュアンスの違い
 まあこれは挙げてればキリないけど。例えば旧版の楓シナリオで、主人公・耕一が楓に「俺のこと嫌い?」と尋ねる台詞があり、更に少し後にそれに応じる形で「じゃあ好き?」と尋ねる場面があるのだが、ワリに突拍子のないこの台詞は不評だったのか、新版では単に耕一が「俺は楓ちゃんが好き」だけに置き換えられていた。どっちにしろ突拍子が無いことには変わりないが・・・(苦笑)。
また新版で、楓が中学の頃、不良男子6人をボコって傷害事件を起こしたという記述があったが、私の記憶では以前はそーゆーの無かった気がする。それに従っていくつかイベントグラフィックが追加されたりもしているが、物語の根幹に関わる変化ではない。

その3.クリアの順番
 今回、クリアの順序が千鶴→梓→楓→柳川→初音→オマケ、と完全に限定されているようである。正確に言えば、一人クリアする毎に次のキャラをクリアするための選択肢が出現するようになっている、ということである。旧版の場合、一部を除いてクリアに順番は無かったはずである。かわりに旧版の「一番最後のグッドEDへの選択肢だけ一度バッドEDを見ないと出現しない」という制限は無くなったようだ(千鶴シナリオだけ健在?)。柳川を除けば長女から順にクリアするようになった、ということだろうか。

その4.オマケシナリオ
 オマケというかおふざけシナリオ。今回も健在だが、ガチ○ピンネタは無くなっている。セイカクハンテンタケシナリオは健在。相変わらず千鶴姉はぎぜ・・・ゴホッ!グゥェホッ!(笑) そして、今回追加されたオマケシナリオで初めて「千鶴の料理がマズい(ヤヴァい)理由」が明かされている。いやあ、なるほどね(笑)。しかしあんなコトやってたら柏木家崩壊も近いぞ(笑)。

その5.キャラグラフィック
 上でも述べたが、全体的に等身が上がって派手さのない絵になっている。最近こーゆー大人しめな絵は好き。基本的なデザインは全員変化ないが、サブキャラのメガネっ娘・由美子さんが、今風に描きかえられてて、旧版のヤボったさが無くなっていいカンジ(笑)。あとはやっぱ楓ちゃんだね(笑)。

その6.設定の補完・あるいは蛇足
 ネタバレ的にはここが最大だろうか。

 今回、唯一正式シナリオに追加されたシナリオ「ヨークの告白」(注:勝手に命名)。子供の頃の耕一に、ヨークがテレパシーで話しかけるこのシナリオで、「エルクゥ、ヨークの正体」「ヨーク地球落下の真実」「鬼4姉妹、及び次郎衛門転生の真実」が語られている。このシナリオではヨークは耕一に「山神様」と呼ばれている。旧版ではなんとなく「意志」らしきものを感じさせるにとどまっていたヨークは、このシナリオで「告白」と題したように、明確な思考を持って耕一とコンタクトをとっている。そして、これまで曖昧に語られるのみだったいくつかの謎を耕一に語るのである。

 まず「エルクゥ、ヨークの正体」。正体というより起源、成り立ちと言った方がふさわしいだろうか。これまでヨークは「エルクゥの宇宙船」程度にしか考えられていなかったが、実は彼(?)こそが「現在の」エルクゥの生みの親だったのである。ある天体で暮らしていた知的生命体の中に、ある時精神疎通の可能な種族が誕生した。それこそがエルクゥの原型であり、その力をもってネットワークを構成したかれらに恐怖した旧人類が、彼らを殲滅にかかった、というのである。ヨークはもともと宇宙船型(?)の知的生命体であり、その科学力、寿命はエルクゥ、さらにエルクゥの母体となった旧人類をも大きく上回っていたが、孤独に宇宙を旅していた彼は、彼と精神疎通が可能なエルクゥと出会い、彼らに力・・・すなわち強靱な肉体と武器を与えたのである。更に、世代を重ねてもエルクゥを殲滅しようとした旧人類に対する復讐心を忘れないよう、「他人類を殺す際に、性的快楽を得られる」よう遺伝子を改造したのである。ワリにとんでもない話である。ただし世代を重ねるウチにこの呪縛から解き放たれるモノたちが出てきていたようで、次郎衛門との愛に走ったエディフェルやリネットは、その先駆けだったらしい。柏木家の男達のなかでも耕一の祖父や耕一本人なども、その呪縛に打ち勝った人物だったのだろう。

 次に「ヨーク地球落下の真実」。初音シナリオで簡単に「リネットのミス」と記されているこの話は、なんちゅーかリネット(初音)らしい話である。雌雄同体であるヨークは時折子供を産むのだが、その周期は本人にも判らないらしい。地球の間近で産気づいた彼だったが、その身は高齢で出産に耐えうるかどうか判らなかった。しかも彼の体内にはリネットを含め多くのエルクゥがいる。一時は出産を断念した彼だったが、リネットに説得され、出産することになる。無事5人の子供を産んだ彼だったが、同時に航行能力を失い、地球に落下したのである。ここまで読めばこの話が「ミス」に属する話で無いことが判る。しかしリネットにしてみれば「自分のミス」ということでヨークに非が及ぶコトを避けたかったのであろう。さすが「痕」中最強の「いいコ(笑)」リネット(初音)である。某偽善者とは雲泥の・・・うわやめなにす(ry
 さて冗談はともかく、問題はヨークが「5人の子供を産み落とした」事実である。しかも彼らは未だ地球の衛星軌道を自我を持たない状態で周回しているというのである。これが果たして何を意味するか。この「5」という数字が耕一+4姉妹の数を意味するものなのか。果たして今後の展開に影響するものなのであろうか?

 さて、ここまでは実はストーリーの本筋とはそれほど関係のない話である。もちろん「痕」的には重要な話であるが、これまでの不明瞭だった部分が補強、明確化されただけで、なにがしかの前提条件が大きく変わったわけではない。問題は3番目、「転成の真実」である。ヨークはいわば天然のバイオコンピュータ生物であり、他の生物何人かの記憶全てを保存してなお余りあるメモリキャパを有している。なんと柏木4姉妹、及び耕一に転生したとされている過去のエルクゥの記憶は、全てこのヨークが保管し、子供の頃の耕一たちに植え付けた、というのである。 (なおこれが水門の事故の際、耕一の鬼が目覚める理由の一端となり、責任を感じたヨークは耕一の事故の記憶を封印したのである)しかもヨークがこの記憶を耕一達に移植したのは「友達であるリネットに恩返しがしたかった」というのが理由だというのである。
 転生というものが存在するとして(少なくとも痕の中だけでも)、それが現在生きている彼らにどれだけ意味があるか。楓シナリオで、次郎衛門とエディフェルが邂逅を果たしたと見るか、耕一と楓は過去の記憶に縛られているだけと見るかは、常々議論の対象となる問題であり、以前から同人誌等で様々な解釈が成されていた。確かに、耕一と楓の想いの発端は結局「過去の記憶」だけである。過去−現在に至る記憶の連続性がどれだけの意味を持つかは双方の論者にも明確な答えが出せなかった。しかしながら、耕一と楓に移植された過去の記憶が他者によって植え付けられた他者の記憶だった、としたら話は全く別である。2人が誇大妄想癖でなければとりあえず「転生は成された」とするのが双方の論者の前提条件であり、そこに意味を見いだすか否かの違いであったハズである。しかしヨークの話を事実とすれば、耕一と楓の想いは所詮他人の想いである。極端な例えをすれば、2人が恋愛小説を読んで主人公とヒロインに感情移入し、それを自分たちの恋と錯覚したようなものである。過去との決別的なものを表現している初音シナリオはともかく、楓シナリオはこの設定で一気にその存在価値を失ってしまうのではないだろうか。シナリオライター達がそこまで考えていたかは不明で、単に輪廻転生に何らかの理論をつけたかっただけかもしれないが、楓シナリオでの「伝えたくても伝えられない想い」とゆーのが好きな私としては、この設定追加は納得しかねるトコロである。
 ・・・まあ、発端がどーあれ結果が全て(出展:おねてぃ)、というのであれば、耕一と楓の想いの発端が他者に植え付けられた他者の記憶であってもどーでもいい、という考え方はできるかもしれないが・・・。

 というように、ヨークの告白を総合すると「痕」の出来事のほぼ全てが彼を発端としていることが判る。彼はこのシナリオの中で「自分自身で善悪を判断してはいけない」などと言っているが、多分に独善的なのは彼ヨークであるコトは明白である。「寂しいから」という理由で意志疎通が可能なエルクゥに力を貸し、何世代にも渡る遺伝子操作を行い、それが過ちだったと悟るとこれ以上過分な干渉はしないと、手を出さなくなる。それでいて友達であるリネットには幸せになって欲しいと願い、その手段がもはや古びた記憶を他人に任せて、幸せのエミュレートをさせることだったのである。はた迷惑この上ない。そもそもコミュニティを形成しない生物であるヨークは「善悪」という概念そのものが地球人類やエルクゥとは異なるのではないだろうか。彼は個体として成熟しきった種であるが故に人種、思想の集合体である一方的な道徳感情、すなわち「善悪」の考えを持たず、故に異なる文明、人種、社会毎に存在する「善悪」が相対的なモノであることを理解しているのだが、その代わり自分の「個人的な」、「感情的な」考えが、結果として他文明にとって「善悪」どちらの結果を生むか考えるコトができなかったのではないだろうか。
 つまり、ヨークは その在り方が「大きな子供」だったのではないだろうか・・・。

 うわ、結構長くなったな(笑)。

2002-12-31 [えちゲ]